ほていさんの覚書

自分なりの視点で世界を切り取りたい

マダガスカル一人歩き#9治安のこと

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 お金で安全を買う

 

前回も書いた通り、今回私は、専属のドライバーとガイドと一緒に

2週間全行程を回る方法でマダガスカルを楽しみました。

 

一人でその二人分の賃金を支払うので、

ツアー代金は、正直かなり割高になりましたが・・・

その分、安心して旅を楽しむことができました。

 

そんなツアーの最中、一番怖いなと感じたのは、

バオバブ並木のあるモロンダバという街から

ツィンギーがあるベコパカという街に行くときでした。

 

バオバブからツィンギーという、

いってみればマダガスカルの2大観光地を結ぶルートなだけに

観光客にとっては大事なホットラインだと思うのですが、

残念なことに最近、治安の悪化が顕著になってきているということでした。

 

①ツーリストキャラバン隊で移動

 

以前は、それぞれの旅行者が自由にこの区間を移動できたらしいですが、

先日、貧困に苦しむ地元住民たちが暴徒化し、

そういった車両を襲撃するという事件が起きたとのこと。

この襲撃によって、マダガスカル人が5人殺害されたといいます。

 

この事件の影響で、ツーリストは決められた時間に所定の場所に集まり、

先頭車両と最後尾車両に警察官を乗せ、まとまって移動するという

防衛手段をとって目的地に向かうことになったそうです。

 

私の車は、3人しか同乗者がいないので

往きも帰りもいかついライフル銃?をもった警察官が相乗りしてきました(笑)

それはそれでとても安心感があり、助かったとは思います。

 

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(日産、トヨタ、三菱などの日本車が大活躍していました!!) 
 

 

私たちがベコパカへ移動した日も、四駆の車が30台以上はあったでしょうか、

とにかく、未舗装の道を砂ぼこりを巻き上げながら疾走していきます。

 

全走行距離、約200キロ

朝8時にホテルを出発し、ベコパカのホテル到着が夕方6時頃だったと思うので、

丸1日がかりの移動になります。とにかく永遠と走ります。

 

当然、トイレ休憩みたいなものも、中間地点のような場所で一斉に行います。

車から降りた人たちが、方々の草むらに向かって歩いていく様子は

なかなか面白かったです。(笑)

 

 

 ②チケットブースが襲撃される

 

この事件も、私が訪れる少し前に起こった出来事らしいです。

道中、川を上って中継地点に行く区間があります。

 

大きな川で、雨季と乾季の水位差が大きいのか、

そもそもそれだけの巨大建造物を建設する経済的な力がないのか、

 

「橋」がない

 

向こう岸に渡ろうと思えば、大きな筏で車を渡すしか方法がない

という、きわめて単純で、原始的な方法にぶち当たります。

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(橋渡しに使う筏もかなり原始的。手作り感満載です。)


 

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(1回の運搬で、3、4台を乗せるのがやっと。地道な往復作業が続きます。) 

 

 

そんな橋渡し場所が2か所あったのですが、

ガイドさんによると、以前まではこの橋渡し場所に

簡易チケットブースのようなものがあって、

ツーリストは、ここで料金を支払い車を筏に乗せる手続きをしていたそうです。

 

それが、やはり、地元民たちの標的になり、

現金を狙ってそのチケットブースが襲撃されたといいます。

 

なので、各社は対策を考え、今ではモロンダバのツアーデスクで事前に集金をし

そのチケットを提示するやり方でこの危うい状況を回避しているそうです。

 

 

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③リバークルーズ中のヨーロッパ人グループが襲撃される

 

これは、私がベコパカからモロンダバへ戻ってきたまさにその日に起こった事件です。

 

リバークルーズというのは、

さっき書いた、車を筏で対岸に渡す、その川で行われていることです。

 

 

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 (こちらは地元民の足、水上バスのようなもの。)

 

 

大部分のツアー客は、陸路+水路の行程でベコパカまで移動をしますが、

中にはこの移動を、リバークルーズで行うグループもあるようです。

 

総所要時間はおそらく、リバークルーズの方が長いのですが、

移動中の快適さが断然水上のほうが快適ではないかと想像します。

 

というのも、陸路は未舗装で、ものすごく粗く、

車内の取っ手を掴んでいても、体がかなりの勢いで振られ、

天井や窓に頭をぶつけることもしょっちゅう

頭が持っていかれそうになります。

 

そんなロデオのような陸路のドライブが、6時間以上も続きます。

私は、飛行機の機内で使うネックピローを装着して

首への衝撃をできるだけ回避しようともがいていました。(笑)

 

それに比べて、リバークルーズの方は、静かで快適。

激しい揺れとは無縁の快適移動ということになるでしょうか。

 

 

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(乾季でこの川幅と水量、時速30㌔程度でのんびりと川を上っていきます。)


 

頭をそこらじゅうでぶつけるたびにイライラとストレスがたまることを思うと

川の上での穏やかな時間は、正直魅力的な選択肢に映ると思います。

 

だけど、この移動法が、強盗たちのかっこうの餌食になってしまうわけです。

川の上で孤立した、無防備な外国人グループ、その車には彼らが持ち込んでいる

大量の金品が積み込まれている。

 

その餌食となったのが、ベコパカに移動中のヨーロッパ人のグループだったらしい。

当然、この船にも護衛の警察が同乗しているわけですが・・・

複数名の強盗の前にはあまりにも無力なのでしょう。

 

岸から襲撃され、船上で乱闘になり、怪我人もでたとか。

幸い、殺害された人はいなかったそうですが・・・。

 

その後、ヨーロッパ人たちは、独自で救助のヘリコプターを呼び

その現場からなんとか避難したそうです。

 

こんなことが起きてしまったら、

せっかくの旅行が本当に台無しになってしまいます。

被害にあわれた観光客には心から同情します。

 

ただ、私のガイドさんも言っていましたが、

このリバークルーズでの移動はとても危険なので、お勧めできないとのことです。

 

さすがに、地球の歩き方にもそんな選択肢があることすら掲載していませんでした。

 

  

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(船の運航をしている地元の人)

 

④ホテルのフロントが標的になる

 

 

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(ホテルのレストランにて)

 

 

ベコパカで泊まったホテルの話。

そのホテルは、五つ星ランクのホテルで敷地も広く、

レストランやスパなどのサービスもそれなりのクオリティをもっていました。

 

このホテルでも、先日レセプションが襲われて、現金が盗まれたとのこと。

そのため、ホテルが独自でガードマンを雇い、

そうした強盗から身を守る対策をとっているということでした。

 

敷地が広く、各ロッジが離れて建てられているので、

ロッジを離れる時も貴重品などを部屋に置いていかないようにともいわれました。

強盗が侵入していたとしても、監視の目が行き届かないからです。

 

私も滞在中、私服を着て、ライフル銃を肩から下げた

ガードマンらしき人の姿を目にしました。

 

自分の身は自分で守る

このことを身に染みて感じた瞬間でした。

 

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(ロッジから見えた夕日)
 

 

⑤四駆の車が横転

 

 

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(これはまだ平らな道の方)

 

 

治安とは関係ないことだとは思いますが、

これも、私が移動していたその日に起こった出来事です。

 

キャラバン隊でモロンダバに戻ってくる最中、

最後尾を走っていた四駆の車が横転し、乗っていた人たちが負傷したとのこと。

 

車が使えなくなってしまったので、

他のツアー客の車に分乗させてもらって、モロンダバまで帰ってきたらしいです。

 

ガイドさんによると、これらの車の中には、

古くて、整備もきちんと行われていないものが多く

故障や事故のリスクも覚悟しておかないといけないということでした。

 

また、ドライバーも、悪路の長距離ドライブに耐えられるような

熟練した人ばかりではなく、

未熟なドライバーがその移動を担当することもあるため

このような事故が起きるのだといっていました。

 

観光客用の車やドライバーだからといって

気軽に信頼してしまうことが、自分の身に危険を及ぼしかねない

といことがわかりました。

 

 

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ちょうど私たちが、モロンダバからアンチラベに移動している時にも

ガイドさんの携帯に、同業の仲間からヘルプの電話がかかってきました。

 

車が途中で故障してしまったから、そっちの車に便乗できないか

という依頼だったらしいです。

 

あいにく、私たちは既に目的地のアンチラベに到着していたので

その友人のヘルプには向かえなかったのですが、

そのグループがどんな結末を迎えたのかは

定かではありません・・・。

 

マダガスカルの各州は、州境にそれぞれ検問所を設けていて、

夜間にはそのゲートを閉めてしまうところもあるそうです。

 

もし、ゲートが閉まる前に到着できなければ、

当然、その州内に入ることはできません。

その場合、車内や別の場所で一夜を過ごさなければならなくなる

という、想像するだに恐ろしい事態になるようでした。

 

 

 

 

私と彼らの間にある果てしない距離

 

 

わずか3泊4日の滞在中に、これだけの事件、事故が起こっている事実、

これはとても深刻な状況なのだと思いました。

 

それはつまり、現地の人たちがどれほど悲惨な状況に置かれているのかを

物語っていると思います。

 

実際、私も行く先々でそういう地元の人たちを目にしました。

何もしてあげられない自分がもどかしく、胸が締め付けられました。

 

ガイドさんの話でも、この情勢は今後も悪化していくのではなかということでした。

政府が本当に国民のために適切な舵取りをしなければ

彼らの怒りや悲しみは和らぐことはないと思いました。

 

そうなれば、世界中の人たちがこの美しい国マダガスカルを訪れることが

さらに困難になってしまいます。

 

なんとか、彼らを過酷な貧困状態から救ってほしいです。

私たち観光客が落としていくお金が少しでも彼らの生活向上のために

活用されていくことを願うばかりです。

 

 

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